身体考3
つづき
では、逆にそれよりもっと軽微な皮膚刺激、言い換えれば指また針あるいは、それら以外でそれぞれ特有の形状・端子を用いて皮膚から入れる刺激はどのようなものが良いのでしょうか?
私は身体がこの刺激は侵害刺激ではなく、それを味方だと判断して受け入れるような刺激をすること、入れられた刺激を身体が快諾して身体を解放するような刺激が良いのではないかと考えています。
日頃いらっしゃった人に例えてお話するのがアサリの砂を吐かせる時、アサリを適度な塩分濃度の塩水に入れて静かな状態で砂を吐かせます。海水と同じようにしてやると海に戻ったと思ってか精一杯呼吸するでしょう?それまでのパックに詰められた窮屈な空間では呼吸もほどほどです。それが元の自然に戻れたら精一杯深呼吸する感じで溜まったストレスや砂、泥を吐くわけです。そういう、外部刺激を施術者が身体のポイントに入れてやる、それは達人の針であっても達人の整体師の指先であっても同じなのではないかと思います。
極言すると強い刺激は不要、かえって身体が不調から自らを回復させようとする機能にとって良くないと言うことになります。強い刺激を加える方法はより強い刺激を身体が求めるようになります。これを閾値が上がると言いますがこう言う刺激療法は際限がなく生体に対してはダメージを与えかねなくなります。入れられた刺激を身体が快諾して身体を解放するような刺激、身体が心地良いと感じる刺激は、機能が活性化して健康になる状態が準備されます。
生理学的には身体にはホメオスタシスと言う働きがあります。日本語では恒常性(こうじょうせい)維持機能と言われ、環境が変化しても身体の状態を一定に保とうとする働きのことをいいます。1859年頃、生理学者クロード・ベルナールは、生体の内部環境は組織液の循環等の要因によって外部から独立している(内部環境の固定性)と提唱しました。これを1920年代後半から30年代前半頃に生理学者ウォルター・B・キャノンが古典ギリシア語で同一の「ホメオスタシス」と命名した概念です。
人間はホメオスタシスのはたらきのおかげで、外の環境が変化しても健康を維持することができます。 寒くなったり、暑くなったり、低気圧になったり、雨が降ったり、湿度が高くなったり環境はつねに一定ではありません。その環境の変化に体が対応して夏、暑くなれば汗をかいて熱を逃がして体が熱くならないようにし冬、寒くなれば筋肉をブルブルッとふるわせて熱を作って身体が冷えないように末梢血管を太くして熱い血液を送り込むように環境の変化に反応して体を働かせて、健康な状態を維持し、生命を維持しようとします。
ホメオスタシスは、外の環境の変化に対応するだけではありません。身体の状態の変化にもしっかりと対応して、私たちの身体が健康でいられるように働いています。食べ物が必要になったら、空腹感を感じさせる。水分補給が必要になったら、のどの渇きを感じさせる。
当たり前のことですが、お腹がすかなければきちんと定期的にはご飯を食べないでしょう。のどが渇かなければ、水分補給を忘れてしまうかもしれません。水分が必要なのに、のどが渇いていないからそのことに気づかない。栄養が必要なのに、お腹がすいていないからそのことに気づかない。これでは、健康でいられるはずがありません。体の状態の変化に応じて、いろいろなサインを出して行動を促しているのも、ホメオスタシスという仕組みのおかげなのです。
このホメオスタシスは何を介して行われるのかと言えば1)自律神経、2)免疫系、3)内分泌系(ホルモン)を介して3つが互いに連携しあいながら行われます。ホメオスタシスによって私たちの身体は一定の状態に保たれ、生命や健康が維持されています。
しかし、ストレス、不安、緊張、恐怖、不快といったものによって自律神経のバランスが乱れると、免疫系や内分泌系にも影響を及ぼしてしまいます。その結果、ホメオスタシスがうまく機能しなくなって、不調を引き起こすことにつながります。ホメオスタシスがきちんと働くようにするためにも、なるべくストレスを受けないようにして、自律神経を整えることが大切です。
では、このホメオスタシスは何に反応してどんな基準、どんなきっかけで発動するのか?と言うとどうでしょうか?どんな状況、環境が整えばホメオスタシスが機能しやすくなるのでしょうか?どんな外的刺激であればホメオスタシスが機能しやすくなるのでしょうか?
逆にどんな状況、環境、外的刺激がホメオスタシスに良くないのでしょうか?
そこまで考えるときりがない、脳で言えば視床下部の何処かや辺縁系の部位なのか、それとも「宇宙にある何か」なのか?とまでなると意味不明!とか言う形而上世界のお話になり私には分かりません。
例えるなら、以前、本田選手がACミランに移籍した時の記者会見で己心の「リトル○○○が・・・」と話していましたが、そのリトル○○○がこの刺激は自分にとって敵対する侵害刺激ではなく、弱った自分を助けてくれる味方だと判断して警戒や緊張を解いて刺激を受け入れるような、身体が快諾して解放するような刺激が良いのではないかと思います。
針の場合、細いピンポイントの皮膚に低刺激の針先を刺入するだけです。(もちろん、場合によっては深層筋を狙って深く刺入することもあります。)紀元前に中国で生まれた体表からの特定のポイント刺激を加えると身体の症状が楽になると言うこの鍼治療はすでにWHOでも認められている低刺激な治療で、しかも有効であることも既に認められています。
私の長針(3寸程度)を扱う場合の鍼治療法を教えてくれた先生は「春風の如き鍼術を磨きなさい。」と教えてくれました。針先が身体に入った時に春になると長く降り積もっていた雪が解け出すような、植物の芽生えが始まるような鍼術を磨け!という事でした。
私は、針刺激としてはもちろんですが、手技においてもこのような低刺激で質的にもソフトな刺激の入れ方を述べてくれたものだと受け止めて日々、いらっしゃられる人の「リトル〇○○」にコミュニケート出来る指先を作ることを目指したいと思っています。
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